農村のインバウンド戦略

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〝ムラにインバウンドを!〟合い言葉に弊社が取り組んでいるインバウンド支援について先日、日本農業新聞社さんに寄稿した内容をお届けたします。

〝京都、富士山、東彼杵〟。東彼杵とは〝ひがしそのぎ〟と読み、長崎県北部に位置するお茶の産地として有名な地域である。平成28年度、この東彼杵に年間17回、約250名もの海外からのツアー客が訪れた。冒頭の3つの地域は、かれら及びツアーガイドの外国人の方々が約2週間の旅行の中で、一番印象に残った場所を聞いた、その回答である。このツアーは、東京滞在中は浅草、鎌倉を、それから箱根、富士山、京都、広島と回り、最後に九州は長崎と平戸を巡るツアーであり、東彼杵はその途中に、約4時間ほど滞在し、茶畑を歩き、お茶の専業農家の方に日本茶の美味しいいれ方を教わり、そして農家民宿の許可をとった農家のお宅に上がって、昼食をいただくという内容。農村が取り組んできたグリーンツーリズムをそのまま海外に展開したところ、思った以上に評判が良く、参加された客様の声にも押される形で、イギリス本社の旅行会社は、来年度も15回のツアー開催を決定した。観光地では味わえない農村のグリーンツーリズムが外国人の心を掴んだのであろう。

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 弊社は〝ムラにインバウンドを!〟というプロジェクトを数年前から東彼杵町をはじめ、菊池市(熊本県)、上下町(広島県)など各地位で地域と一緒に取り組んでいる。それは、地域の価値(食、歴史、自然、技など)を安売りすることなく、次世代に繋げていくためには小さな農村ほど世界というマーケットを目指すべきとの考えからである。SNSの発達がそれをより可能にし、そのためにはリアルな交流による口コミが大切なのである。

 何故、今農村にインバウンドなのか?まずは、海外の方々のニーズから見れば相次ぐ震災のニュースが世界に広がる中で、規律正しい日本人の姿、親切で協調性ある国民性がクローズアップされ、さらに日本の和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたことも追い風となり日本ブームに火がついたこと、その前からアニメを通じ日本に憧れる世界の若者達が日本ブームを下支えしたのも大きい。また国も来年のラグビーワールドカップ、2020年の東京でのオリンピック・パラリンピック開催と、観光庁のみならず国をあげてインバウンド推進の施策を打ち出している。農林水産省でも2020年に向けて全国500カ所程度のモデル地域を選び、農家民宿やゲストハウスなどを整備し、そこに外国人も受入れ農村ビジネスを展開することを積極的に後押しする。

 実際にムラに訪れる海外の方々の声を拾っていくと、〝日本人のお宅で一緒に食事を食べたり、暮らしを体験ができたのが非常に良った〟〝自分はベシタリアンだけど、ツアー中、他の人たちとも同じ食事がいただけた〟〝弓道体験が良った〟など、外国人向けツアーでは、グリーンツーリズムの農泊体験、食体験だけではなく武道、祭、神事などの参加など地域の伝統文化体験など、日本人以上にその価値を感じている。インバウンドは、組み立てに如何では農村に経済効果をもたらす余地が大きいことを実感している。

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 ただ、日本のグリーンツーリズムは、民泊型修学旅行など大手旅行会社頼みで誘客してきたところも多く、農泊や体験受入れ実践者が自ら情報発信し一般の都市住民に誘客を行うことは遅れている。まして個人の外国人旅行者に向けて多言語で情報発信を行い、多言語で受け答えできるところは少ない。しかし、インバンド受入れしているムラの実践者たちは、口々に〝人間と人間だから、身振り手振りで何とかなる〟と。実際に何とかなっている。昨今は翻訳アプリも進化し、サポートツールは日々進歩している。

 やはり初めて外国人を受入れるには、きっかけが必要である。自分が地域に外国の皆さんをつなげる場合は、FIT(海外個人旅行)ではなく、まずは東彼杵町のように、いい客層も持つ旅行会社さんの商品造成担当者を実際にムラに連れて行き、そこからパックツアーを組んでもらう。予め来訪する日時も人数も分かっているし、旅行会社がバスを貸切り、通訳案内士も連れて来てくれれば地域側も安心である。ただし事前やりとりは、各地域の例えばグリーンツーリズムの事務局などがやっていく必要がある。昨今は国が進める「地域おこし極力隊」がその任を担うケースも見られる。

 日本のムラには、まだまだ農業、漁業で生業を立てている人達は多い。ムラでは自然の恵みに感謝し、八百万の神々とともに祝い、歌い、踊り、あるときには荒ぶる自然を畏れ、大自然の営みの前の人間の非力さを思い知る。結果、自然に対し、人に対し謙虚に接していくことにつながっていく。混迷を深めていく世界において、実は日本の農山漁村に暮らす人々と同じ時間を過ごし、その価値観を共有することが、世界を平和に導く一番の近道なのかもしれない。〝ムラにインバウンド〟是非、取り組んでいきましょう。

ポイント 1 和食が世界遺産として評価
     2 オリンピックに向けて国も支援
     3 農村の地域資源が高評価
     4 日本の農村が世界平和に貢献

キャプチャ  

日本農業新聞2017年3月19日