これから求められるのは、従来のイベント型観光ではなく、滞在交流型という地域づくり型観光。18~19年ムラを歩きながら得た「九州のムラ流 地方創生への10の提言」を。
1.「ムラを歩く」ということ。
地域には様々な地域資源があるが、ムラを歩かないと見えない世界がある。また、その際重要となるのがよそ者の視点入れること。地元の人には分からない良さもあることから、地域おこし協力隊や移住者、メディア等、よそ者の視点を入れながらムラを歩くことが大事。
2.「ムラの遺伝子を知る」ということ。
最近はどこの地域も地方創生、地域活性化のために商品開発やツーリズムのプログラム開発等に取り組んでいるが、その地域の顔が見えるものではなく、他の地域を真似てつくっているものが多い。そうならずに地域ならではのものをつくるためには、ムラの遺伝子を知ることが重要。
3.「ムラのキーマンを見つける」ということ。
最初に誰と組むかは非常に大事。必ずしも区長である必要はない。地域の人と接しているとキーマンは誰か分かってくる。行政は平等主義のため平等にしか声をかけられないが、それではうまくいかないので、そこは民間に協力してもらうとよい。
4.「ムラ会議(ブレーンストーミング)を重ねる」ということ。
ムラの会議は時間がかかるが、何回もブレーンストーミングを重ねることで、だんだん地域の遺伝子が見えてくる。ムラの会議には、行政の方も積極的に入っていくとよい。
5.「ムラビジョン(先ずは3年後)を描き、共有する」ということ。
一番大事なことは、ムラのビジョンを描くこと。ムラのビジョンがなければ、地域おこし協力隊の人も何をやってよいか分からない。ムラの遺伝子が分かり、ムラの個性や強みが分かり、キーマンが分かり、動かす組織も分かれば、次に何をやるのか、ムラをどういうところにもっていきたいのかの作戦会議をし、先ずは3年後のビジョンを描くことが大事。その際、ここの部分はできない、議論がないなど、無いものが見えてくるので、人がいなければ外部人材を活用するなど、無いものを埋める作業をすればよい。
6.「ムラとマチ(外部人材)を繋げる」ということ。
地域住民を巻き込んで地域づくり型観光を進めていくためには、ムラは世界と繋がり、行政と繋がり、メディアと繋がっていかなければならず、それをコーディネートする組織・人材が必要となる。しかし、集落にはこういう機能をもった組織がなかなかないため、コーディネーター組織、人材として外部人材を入れることが大事。特に、起業家マインドを持った人を入れるとよい。
7.「ムラの新たな生業の素を創る」ということ。
マチの人がお金を払いやすいのは食で、食のブランド化を図るためには地域に来てもらうことが一番早い。「観光」と「食」は、これからのムラの生業のテーマとしても大きい。そして、その時に重要であるのが、地域の遺伝子に基づいた観光商品、産品をつくってもらうことである。
8.「ムラなく、小さな成功体験を積み重ねる」ということ。
外国人観光客を100人受け入れるなど、いきなり大きな成功体験をするのは難しい。まずは、モニターツアーの実施、テスト販売など小さな挑戦から実施してみる。小さな成功体験をどれだけ継続して積み重ねられるのか。集落の場合、なかなか動かないため、ここからはじめるのが大事。成功体験を積み重ねるうちに、地元実践者たちに火をつけていく。
9.「ムラの6次産業化拠点を育てる」ということ。
お金がまわらないと動かない。6次産業化の拠点候補地として、観光協会、第三セクター、道の駅等、既にある組織を活用するのもよいし、地域おこし協力隊が起業するなど外部人材を活用するのも良い。
10.「ムラの魅力を海外へ発信する(新たなマーケットの創出)」ということ。
勇気ををもって、ムラを世界に発信・解放すべき。2020年に向け、海外の日本ブームは続いていく。しかも今後は、決まりきった定番ルートではなく、より日本らしい、より日本の魅力にあふれている農村漁村も大きな可能性がある。
自分が関わっている鹿児島県薩摩川内市入来集落の「サムライ・ツーリズム」や長崎県東彼杵町の「グリーンティーリズム」、広島県府中市上下町の「ニッポン体感ツアー」などでも、これからインバウンドの受入れに向け準備中である。